鉄の歴史は、縄文時代の終りごろ日本に伝わり弥生時代の中期から後期にかけて道具の主流となりました。奈良時代から平安初期にかけては、この備後地区を含む中国地方から、国家が必要とした鉄の90%以上を産出したという説もあるほどです。豊かな森林資源と肥沃な堆積平野に広がった農業の安定した生活基盤、そして海運を中心とした物流の利便性を背景に、中国地方の鉄文化は早くから花開いたのです。
鉄文化の一端に携わる者として、この伝統は誇りであり大いなる励みでもあります。私たちに鉄文化の新たな歴史、伝統の1ページを記す勇気さえ呼び起こしてくれるような、そんな気さえするのです。
鉄、なかでも日本刀に代表される鋼は、文化の尺度とされ、「鋼は百工の基」と言われています。鋼の技術がその時代の産業と文化を映し出すのであれば、私たちはその時代の最先端技術や、鋼を生み出す技術に生かさなければなりません。深江特殊鋼は令和の時代を迎え、今、新たな鋼文化の創造に取り組んでいます。先人たちのように、我々もまたその時代の最高技術を、研ぎ澄まされた鋼に注ぎ込みたいと思います。鋼文化の担い手として、その伝統を守るためにも、お客様と共に成長を続けてまいります。
代表取締役社長